小島動物病院AWC院長の小嶋です。PCAPとはPathology Centered Animal Practiceの略語で、‘病理学を中心にした動物の診療’です。ここでは動物の病理学に関わることを記載しています。2020年のテーマはWith With Withで動物の一つの疾患に関して様々な側面から分かりやすく見ることにしています。11月にも記載しましたが、今年の最後はいい話で締め括りたいので、今年良かったと思えた診療のことについて書きたいと思います。

2匹のミミちゃんへ。ありがとう。
がん治療では、まずもって重要なことは治療方針を決めるために病理診断による確定診断を行います。どんな相手が分からないのに、戦い方を決めることは出来ないわけです。チョコとワインが好きな女性を飲み放題の焼き肉に誘っても成功率は、落ちるのです。今年は抗がん剤治療を希望される飼い主様の多い年でした。私は腫瘍の診療に関しては外科手術と病理による確定診断を行いますが、抗がん剤治療は知識も経験も不十分ですので、腫瘍科認定医を取得している恭子先生にお願いしており、大活躍の年でした。その中でも今年印象に残っているのは乳がんの抗がん剤治療を行った2匹のミミちゃんのことを書こうと思います。猫の乳がんはそのほとんどが悪性であり、予後が厳しいことが多いです。当院では予後予測に役立つ病理検査から得られる指標の一つに腫瘍細胞のエストロジェンレセプターの発現と脈管内浸潤の有無を採用しております。残念ながら二人のミミちゃんはエストロジェンレセプターの発現がなく、また複数のリンパ管内に腫瘍細胞が浸潤しているのを認めました。ミミちゃんNo2においては左側の全ての乳腺でしこりを認めました。画像の検査では全身への転移はなかったので、抗がん剤治療をご家族様と相談して実施しました。不安感もありましたが、計6クールの治療を行いました。クールを超えるたびに検査を行いましたが、最後まで転移もなく、重篤な副作用もなく乗り越えてくれました。世の中には抗がん剤治療に対してあまり良くないイメージを持っている方も多く、私もどちらかというと積極的なタイプではありませんが、このように上手く行った症例を積み重ねて、来年も動物と飼い主様に喜んでもらえる診療を行っていきたいと思います。

2021年のPCAPのテーマは‘超三流になる’です。
今年はコロナの年で様々なイベントの自粛やオリンピックの延期などがあり、うちに籠ることの多い一年でした。私は会議や出張もなくなり、病院や家族と過ごす時間が圧倒的に多くなりました。孤独になる時間も少なからずあり、自分を見つめ機会になりました。改めて自分という人間を振り返ってみると、残念ながら藤井聡太さんのような特出した才能がなく、今まで手を出したものは全て三流であったように感じます。その中で少しだけ他人に誇れるものはあるとすれば、好きなことや、始めたことは止めないということくらいと思います。PCAPはその最たるもので、病理をやめたくなくて、本日までかじりついております。その他にも続けていることは、サーフィン、写真撮影、言葉の勉強、動物の臨床、学術報告、奥さんの研究があります。そんな私ですが、昔から興味があることで勝手にライバル視しているのがレオナルド・ダ・ヴィンチのウィトルウィウス的人体図で、この機会になんとか勝てないかなと考えてみましたが、絵だけでは、なかなか難しいことがわかりました(付図参照)。そこで今までは三流だったかもしれませんが、その三流の力を結集し、レオナルド・ダ・ヴィンチに挑戦してみようと思いました。そもそも続けているものはいずれも私の周りではメジャーなものはなく、奥さんの研究に関しては完全にブルーオーシャンになりますので、これはオリジナリティーに富んだものが作れるのではないかと考えました。来年もきっとコロナがくすぶって、思ったような日常は過ごせないことが、なんとなく想像されます。この機会に一度、自分を整理して、もう一歩成長するために三流を組み合わせて‘自分の超三流’をPCAPのテーマとしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

告知3件(採用、学会、研修)になります。どうぞよろしくお願いします。

その① 獣医師募集のお知らせ

② 第8回日本獣医病理学専門家協会(JCVP)学術集会の応援
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https://researchmap.jp/read0004131/research_blogs
大会HP  https://jsvp.jp/jcvp/8th/index.html
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③ 麻布大学附属動物病院神経科専科研修獣医師の募集お知らせ

現在、私も所属しております麻布大学附属動物病院の神経科では来年度の専科研修獣医師を募集しております(一応12月11まで)。神経科を担当しておりますのは、小動物外科学研究室の齋藤弥代子准教授です。齋藤先生はアジア獣医内科学会、獣医神経病学会 神経科専門医を取得され、国際獣医てんかん特別委員会委員をお務めです。私は神経学的検査が病理診断に通じるものを感じ、勉強をしておりました。一緒に働く大学院生もナイスガイです。ご興味をお持ちの方は、齋藤先生におつなぎいたしますので、是非、ご連絡ください。