小島動物病院AWC院長の小嶋です。PCAPとはPathology Centered Animal Practiceの略語で、‘病理学を中心にした動物の診療’です。ここでは動物の病理学に関わることを記載しています。
今回は呼吸器の病気について記載したいと思います。

新緑の季節っていいですね。

こんにちは。GWいかがお過ごしでしたか?新緑の季節で天候にも恵まれ、いい時期を迎えました。ワンちゃんを散歩させている皆さんの足元も軽やかですね。最近は猫ちゃんやウサギさんを散歩させている方もお見掛けします。彼らも外の刺激でワクワクが止まらないと思いますので、どうぞ気を付けてお散歩を楽しんでください。
少し季節はずれますが、私達も冬はインフルエンザ、春は花粉症と、咳やくしゃみなどの呼吸器の病気が多くなることがあります。動物にも呼吸の病気はたくさんあり、主に気管や肺に障害が起きることで咳やくしゃみをすることがあります。
本日は動物の肺の病気についてご紹介します。呼吸器の病気を発生してしまった動物をみる飼い主様のお話を聞くと本当にご不安に感じられています。もしご自宅にいる動物にそのような症状があった場合の参考にして頂ければと思います。

 

どうして咳やくしゃみなどの呼吸の病気がでるの?

理由は比較的簡単に想像ができると思います。鼻や肺になんらかの事件が起こっているからです。
簡単な風邪や軽度の肺炎の場合もありますが、PCAPではワクチンなどで予防できるWellnessの領域を超えた重病をみることがありますので、そのいくつかのパターンをご紹介します。

胸に水が溜まってしまったり上手く肺が機能しなかったり、炎症により生じた粘液や痰あるいは異物などで気管の通り道が阻害されたりすると酸素が上手く行き渡らず苦しくなってしまいます。
原因は様々ですが、炎症が起こってしまったり、ひどいアレルギーなどで喘息になっていたり、癌が発生している場合などがあります。
まずはレントゲンなどでどんな病気になのか、推測できるものなのか確認したりします。肺などの呼吸器に病気があることを確認します。

【猫の肺水腫・・・原因はなに!?】

 

【猫の長期に渡って続く咳・・・原因は何!?何!?】

 

【犬の肺のできもの・・・原因は何!?何!?何ーーーー!?】

次章で肺に病気が出来た原因をご紹介しますが、一つ覚えて頂きたいのが、心臓に病気があっても呼吸が妨げられます。
どうしてかというと心臓に負担がかかって無理をして心臓が大きくなってしまって気管を圧迫してしまうからです。このお話はまたいつかPCAP的循環器科でお話ししたいと思います。

【犬の肺水腫・・・原因は慢性の心臓病です】

ゴホゴホ・・・辛いっす・・・

どうやって原因を調べるの?

レントゲン検査のヒントを元に胸を開けて、病気の場所を確認し、病理検査をすれば分かります。では、胸を開けましょうかという話にすぐなるかというとなりません。ご自身に照らし合わせて想像してみてください。どうしてもそうしなければいけないのでしたらしょうがないですが、出来れば避けたいと思うのが人情だと思います。私達もしょうがない時はそのことを理解して頂くためにきちんと説明を行います。
が、少しでも負担のかからないように、胸に水が溜まっているのであれば、まずは水を抜いて少しでも楽にしてあげること、喘息などの慢性的な病気でしたら、肺の入り口に問題が多いので内視鏡検査を行ったりします。できものの場合は胸を開けなくてはいけない場合もあり、悩ましいところです。
いずれにしても原因の究明は病理検査が主役になります。
細胞診など少しの細胞でも診断がつく病気もありますし、病理組織検査でたくさんの細胞を取らなくては難しいこともあります。
また、肺だけの問題ではなく上記したように、心臓などの他の臓器に原因があったりして全身をよく把握しないと分からないこともあります。

レントゲン写真でご紹介した犬や猫の診断結果

【猫の肺水腫の原因は、猫伝染性腹膜炎ウイルス感染症】

胸水から細胞診とセルパック法を使って組織検査と免疫染色を使用して猫の恐い伝染病である猫伝染性腹膜炎ウイルス感染症を診断

 

【長期に渡って続く咳の原因は猫喘息】
内視鏡と細胞診を使って、長期に渡って続く咳の原因を猫喘息と診断

【猫のリンパ腫】
癌でも細胞診だけで診断された猫のリンパ腫

【猫の肺癌】
組織診断が必要であった猫の肺癌

【犬の転移性癌(悪性メラノーマ)】
犬の肺へ転移して判明した悪性メラノーマ

 

治療はどうするの?

原因究明には細胞の検査である病理検査が必要になります。ただでさえ呼吸が苦しいので、少しでも動物の負担が少なくしつつも、どうして?何をしてあげれるのか?今後どうなるのか?という飼い主様のご不安を和らげられるように解決策を一緒に考えていければ良いと思います。

治療は原因によりますので、まずは原因の探索が必要です。