明けましておめでとうございます。 小島動物病院AWC院長の小嶋です。PCAPとはPathology Centered Animal Practiceの略語で、‘病理学を中心にした動物の診療’です。ここでは動物の病理学に関わることを記載しています。2021年のテーマは‘超三流になる’です。もう一度、足元を見つめて、身近な病気を再度確認すること、所見をしっかり取ることをして、病理と臨床の事やそれに近しいことをまとめています。プラスαの一言コラムでは病理と日々の生活を結び付けて、少しだけアートなことをしたいです。その1はマイボーム腺腫とサーフィン病理についてです。

マイボーム腺腫の犬の1例(皮膚、腫瘍、眼科、外科、病理の視点から)
概要:マイボーム腺は眼瞼の縁に見られる皮脂腺で、分泌物が角膜への栄養補給、涙の蒸発と顔に涙がこぼれるのを防ぐ機能を持っています。そのマイボーム腺が中高齢期(平均年齢8歳)に腫瘍化し、しこりを作るとマイボーム腺腫となります。第3眼瞼の腫瘍はその多くが良性のマイボーム腺腫瘍です。鑑別診断には霰粒腫、嚢胞、感染症、黒色腫、肥満細胞腫などがあり、全身への影響から肥満細胞腫には特に注意したいです(気を付けよう)。これらの疾患の絞り込みには細胞診を行います。細胞診では小型円形核を有する上皮性細胞で細胞質は多量の空胞を持つ成熟皮脂腺細胞とその補助細胞により構成されることとその細胞異型を確認出来れば自信を持ってマイボーム腺腫の治療に進めます。腫瘍以外の観点では角膜に影響が及んでいることが多く、出血や色素沈着、また2次感染による角膜炎のコントロールに気を付けたいです。手術は完全切除し、同時に病理でマージン確保を確認します。創傷治癒過程は通常の皮膚疾患と同様の対応で、感染を防いで、清潔を保って治癒を待ちます。

所見:表皮直下の真皮において境界明瞭な多房性充実性腫瘍が形成されている。腫瘍においては1つの明瞭な核小体を有する円形核と微細空胞状細胞質を有する成熟皮脂腺細胞とその補助細胞が後者を優位に混在性にシート状増殖している。増殖細胞の異型性は乏しいが、補助細胞には核分裂像が散見される。腫瘍内には扁平上皮化生を認める。腫瘍周囲にはリンパ球、形質細胞主体の炎症細胞浸潤を認める。表皮は一部で自壊しており、細菌繁殖と好中球浸潤が認められる。その他、腫瘍に隣接してマクロファージ及び多核巨細胞の集簇を認めた。内部には大小のスリット状の空隙や好塩基性~両染性の物質が沈着していた(霰粒腫はキレイだなと思います)。

一言コラム:サーフィン病理(PAM染色のウェットスーツ)
PAM染色とは銀染色の一つで過ヨウ素酸メセナミン銀(PAM)染色といいます。主に腎臓糸球体の基底膜の染色に使用され、免疫複合体が沈着する糸球体腎炎である膜性腎症(膜性糸球体腎炎)の診断に使用される特殊染色です。グレー~黒とピンク色が綺麗な染色です。趣味のサーフィンの道具を病理染色に重ねて集めていますが、数年ぶりに冬のウェットスーツを更新しました。HE染色、免疫染色に続き、PAM染色を採用しました。次回は何にしようかなと思案しております。息子から段ボールのサーフボードをプレゼントしてもらいました(嬉しいです)。
今月の言葉:好きこそものの上手なれ。でもサーフィン上手じゃないうえに、中途半端に好きなことをアピールしたりしております。またそれを他人に作ってもらったりするあたりがしっかり超3流ですね。

 

告知2件(採用、学会)になります。どうぞよろしくお願いします。

その① 獣医師募集のお知らせ

② 第8回日本獣医病理学専門家協会(JCVP)学術集会の応援
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大会HP  https://jsvp.jp/jcvp/8th/index.html
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