小島動物病院AWC院長の小嶋です。PCAPとはPathology Centered Animal Practiceの略語で、‘病理学を中心にした動物の診療’です。ここでは動物の病理学に関わることを記載しています。2021年のテーマは‘超三流になる’です。もう一度、足元を見つめて、身近な病気を再度確認すること、所見をしっかり取ることをして、病理と臨床の事やそれに近しいことをまとめています。プラスαでは病理と日々の生活を結び付けて、少しだけアートなことをしたいです。その2は犬の皮膚型リンパ腫です。リンパ腫は発生部位や細胞のタイプにより、細かく分類がされており、予後や治療の有効性などは様々ですので診断がついたタイミングで治療方法を確認しながら進めています。最近は本来、稀な病気と思っていますが犬の皮膚のリンパ腫に立て続けに遭遇しているので少し整理したいと思います。

皮膚型リンパ腫の犬の1例(皮膚、腫瘍、病理、最近の臨床の話題の視点から)
概要: 犬の皮膚型リンパ腫は多くがT細胞性の上皮向性タイプで菌状息肉腫が典型的です。また表皮/上皮のみに腫瘍細胞が見られるものはパジェット様細網症、菌状息肉腫で末梢血にも腫瘍細胞が検出されればSézary症候群と呼ばれます。診断には病理組織検査が必須であり、最近では遺伝子検査も広く普及しています。兎にも角にも診断をつけないことにはどうにもならない病気の一つです。発生の平均年齢は10歳、雄の方が多いとされています。症状は皮膚や口唇部の脱毛、鱗屑と掻痒に始まり、潰瘍に発展し、それが全身性に波及していきます。治療は放射線治療、抗がん剤治療が基本的な方法で、CCNUという薬は経口薬で投与もしやすいことから一般の病院でも使用されることが多いと思います。寛解期間中央値250日以上で、生存期間中央値は399日以上とされています。以下、私見になりますが、リンパ腫としては比較的治療イメージのいいもので、飼い主様にリンパ腫とお伝えすると大変落胆されますが、タイプの違いをお話ししてご理解を頂くようにしています。
皆様が抗がん剤などの治療を希望されるわけではありませんので、昔ながらのプレドニゾロンの使用や、よく見かけるインターフェロンの使用も有用に思います。また個人的に補助療法として大変有用と思っているのが、レチノイド、シャンプー療法、外用薬の採用です。これらは安全性も高く、飼い主様と病院スタッフ皆で人の手で治療が行える上に、治療効果が高く感じ、‘3方良し’の治療と思います。

所見: 表皮、特に基底細胞層および真皮浅層において小型円形腫瘍細胞がび漫性に浸潤している。腫瘍細胞は濃染性円形核を有するリンパ球様腫瘍細胞である。細胞質はわずかで、両染性~好酸性を示している。異型性を認めるが、核分裂像は稀である。それら腫瘍細胞は毛包外根鞘や脂腺、アポクリン腺に浸潤している。また表皮は肥厚し、角化亢進を示している。有棘細胞は空胞変性を示しており、稀に棘融解細胞が観察される。病変が重度のところでは表皮上層や消失している。アポクリン腺は拡張し、好塩基性液が充満している。腫瘍細胞は免疫組織化学で抗CD3抗体に陽性を示している。

今月のアート:言葉×Cat(ピノコ)×病理+動物病院アクリルアート
我が家の美猫のピノコさんの目にリンパ腫の細胞診、HE染色、免疫染色を組み合わせてみました。ピノコももう17歳です。鼻の頭にフードの色がついています。可愛いおばあちゃん猫です。今年も元気で過ごそうね。


また病院ではコロナ対策でアクリル板を用意していますが、ただのアクリル板では味気ないので、少し遊び心を取り入れて、動物アートのアクリル板にしました。動物アクリルアートは院長発信で過去様々な取り組みをした中で、唯一、大好評を頂いております。どうぞ、まだご覧になっていらっしゃらない皆様、マスクの奥で笑顔をよろしくお願いします。
飼い主様より院長の自作ですかとご質問を頂きますが、私は‘超三流’ですので、作ってもらって、自分でやったような顔をして過ごしています(北原工芸さんありがとうございます)。

動物の皮膚がんサポートセンターについて

 

告知2件(採用、学会)になります。どうぞよろしくお願いします。

その① 獣医師募集のお知らせ

② 第8回日本獣医病理学専門家協会(JCVP)学術集会の応援
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https://researchmap.jp/read0004131/research_blogs
大会HP  https://jsvp.jp/jcvp/8th/index.html
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