小島動物病院AWC院長の小嶋です。PCAPとはPathology Centered Animal Practiceの略語で、‘病理学を中心にした動物の診療’です。ここでは動物の病理学に関わることを記載しています。2020年のテーマはWith With Withで動物の一つの疾患に関して様々な側面から分かりやすく見てみることにしています。初回は犬の甲状腺機能低下症を取り扱いましたが、早速詰まってしまいました。Withが三つも並べられず、困ったので、栄養学を入れてみることで対応することにしましたのでご容赦ください。

猫の黄色脂肪症とは


黄色脂肪症とは猫に発生する病気で、お腹の中の脂肪が過剰に酸化して黄褐色のセロイドという物質が沈着してしまい、自分の体が異物だと認識してしまい、炎症が生じてしまいます。不飽和脂肪酸の過剰摂取、すなわち魚、赤味魚の長期投与が原因ですので、適切な食餌管理はとても大事です。

PCAP的猫の黄色脂肪症との遭遇

私は黄色脂肪症を学生の頃に内科の教科書で勉強した時に、この病気が発生するのが身近な食餌環境にあり、とても面白いと思いました。いっぽうで近年の動物達の食餌環境は改善傾向にあり、当院でも良質な食餌をおすすめしています。そのかいあってか猫の黄色脂肪症を見ることは稀になりました。先日、改定された内科学の教科書を参照してみると黄色脂肪症の項目がなくなっていました。岩合光昭さんの写真に出てくるような港町のイケイケの野生の猫ちゃんや私の祖父がそうでしたがおじいちゃんのお酒のつまみで生活しているような猫ちゃんが減っているのだと思います。病気にならないようにサポートをするのは動物病院の当然の役目ですが、昔ながらの風景が見えなくなるのも少し寂しいと感じます。
昔から記載されている黄色脂肪症はお腹の脂肪組織がび漫性に黄色を帯びたり、臨床症状が出ているものが紹介されていますが、私は若者なので、そのような病変に出会ったことはありません。今回、ご紹介するのは日々の手術などで偶発的に認められたもので腫瘤状になっているものばかりですので、黄色脂肪症とは言えない感じもしますが、セロイド沈着を起点とする炎症性変化なので、病気の本質としては同じように思います。時代によっても捉え方を変えてみたり(実際は勝手な解釈をしているだけかもしれませんが)というのもブログですので良しとしてみたいと思います。

PCAP的Academicな冬日本獣医師会雑誌with 日本獣医病理専門家協会 with日本獣医皮膚科学会 with Joncol

2020年3月現在、コロナウイルスの影響で世間が大変なことになっています。私たちに出来ることは残念ながら多くはありませんが、引き続き、目の前にいる動物の健康を通じて、ご家族の皆さんが少しでも平穏なお気持ちで日々を過ごせるようにご協力できればと思います。年度末には日本獣医病理学専門家協会と日本獣医皮膚科学会での発表を控えておりましたが、残念ながら全てキャンセルとなりました(皮膚科学会はWeb集会になるのでその時に発表をしようと思います)。特に日本獣医病理学専門家協会の発表ではご指導頂いた教授の退官と一緒のタイミングでしたので、不肖の弟子の成果をお見せ出来なかったのは本当に残念でした。物は考えようと言いますので、ここはしっかり地に足をつけて、いつも支えてくださる皆さんとじっくりお話をしたり、日頃のデータを整理したりする機会としております。おかげさまでこの冬は当院から日本獣医師会雑誌と小動物臨床腫瘍(Joncol)への論文を掲載することが出来ました。世は巣ごもりになっていますが、病気と深く向き合い、小さくても少しでも形になるようにまた頑張りたいと思います。どうぞご理解とご協力をお願いします。