小島動物病院AWC院長の小嶋です。PCAPとはPathology Centered Animal Practiceの略語で、‘病理学を中心にした動物の診療’です。ここでは動物の病理学に関わることを記載しています。2021年のテーマは‘超三流になる’です。もう一度、足元を見つめて、身近な病気を再度確認すること、所見をしっかり取ることをして、病理と臨床の事やそれに近しいことをまとめています。プラスαでは病理と日々の生活を結び付けて、少しだけアートなことをしたいです。今月は‘猫吐く’と‘感染対策もScience’です。
背景:‘猫って吐くよね‘。動物病院で飼い主様と会話になることが多いフレーズです。実は私も、精神的にひ弱なことから、よく洗面台で吐いてしまうので、家族にいつも迷惑をかけています。インターネットで’猫 吐く‘で調べて見るといっぱい出てきます。原因には毛玉や胆汁のこと、異物のことなどが書かれております。個人的にはそうねというものもあれば、う~んというものもあります。いつものPCAPではある特定の疾患について記載するので、教科書に書かれているものを引用しますが、私が現場で遭遇した’猫吐く‘で病理診断を行っているものを紹介します。
概要:基本的には‘猫が吐く’というのは胃腸の通りが悪くなっているか、他の臓器がおかしくて気持ち悪いことが多いと理解しています。 胃腸の通りが悪いパターンですと、食道から腸にかけて閉塞しているような状況で、その原因が毛玉や異物のこともあれば、高齢であれば腫瘍であることもあります。病理診断を用いるのは腫瘍であることが多く、腸腺癌が代表的です。
猫では私達、人間と違って大腸癌や胃癌が稀です。自験例で、ビックリしたことがあるものには肺癌がすごく小さいのに、腸に大きな転移巣を形成した猫ちゃんを見たことがあります(TTF-1という抗体を使った免疫染色で確定します)。
また他の臓器がおかしくて気持ち悪くなっちゃうパターンでは、腎臓病がすごく多いと思います。猫ちゃんは腎臓病や膀胱炎になる子がすごく多いので、生活環境も含めてケアしていただきたいです。
純粋な胃腸炎のパターンですと過去の本ブログでも紹介したIBD(炎症性腸疾患)が重要で、アレルギーが関与していることもあります。
所見(猫の胃腺癌):胃幽門部で腫瘍が形成されている。腫瘍は線維性結合組織の増生を伴い、粘膜から浸潤性に増殖する上皮系腫瘍細胞が観察される。腫瘍細胞は形態的に2パターンを示し、よく分化した上皮系細胞の腺管状増殖巣と偏在性円形核とPAS反応陽性の空胞状細胞質を有する類円形細胞のシート状増殖巣により構成されている。それら腫瘍細胞は免疫染色でCytokeratin AE1/AE3に陽性を示し、後者の腫瘍細胞が増殖の主体を占めている。また腫瘍細胞は大十二指腸乳頭や胆管へも浸潤している。腫瘍部および非腫瘍部の胃組織におけるワルチン・スタリー染色ではヘリコバクター属菌は観察されなかった。(人の胃癌の原因はピロリ菌であるとい話ですが、本例ではピロリ菌は見つかりませんでした。)
どうぶつPathoアート改めNS cap‘動物の臨床と病理と何かいいもの勉強会:Animal Clinical Pathological Something Nice: 新型コロナウイルス感染症の第6波や今後、発生しうる感染症のため、当院では思い切って大掛かりな院内対策を講じることにいたしました。待合室のソファを抗菌対応にしていることはご承知と思います。
今回は、更にCCFL抗菌ライトと複合型光触媒チタンテックス処理を院内各所に施しました。これらは新型コロナウイルスを含めたコロナウイルス、ネコカリシウイルス、ノロウイルス、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、カビ、大腸菌、黄色ブドウ球菌、アンモニア臭などへの対応が可能です。当院の感染症対策は皆様の思いやりに応えるため、Scienceの力をフル活用します。飼い主様におかれましては動物とご自身の健康のことだけ考えて、安心してご来院くださいね。
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