小島動物病院AWC院長の小嶋です。PCAPとはPathology Centered Animal Practiceの略語で、‘病理学を中心にした動物の診療’です。ここでは動物の病理学に関わることを記載しています。2021年のテーマは‘超三流になる’です。もう一度、足元を見つめて、身近な病気を再度確認すること、所見をしっかり取ることをして、病理と臨床の事やそれに近しいことをまとめています。プラスαでは病理と日々の生活を結び付けて、少しだけアートなことをしたいです。今月は‘舌の黄色腫’と‘木鶏会キックオフ+半導体レーザー始動’です。
背景:犬の口の中に出来る‘できもの’は悪性のことが多いです。飼い主様も、よくご存じで、大変心配されてご来院されることがありますが、必ずしも悪性腫瘍であるばかりではないことを知って頂ければと思いました。
概要:黄色腫とは, コレステロールを主成分とする脂質を貪食したマクロファージの集簇を指します。通常, 犬の黄色腫は頭部, 四肢等の皮下組織に好発しますが、 舌にも発生することが知られています。舌の黄色腫には, 数㎜大の小結節が多発性に認められる疣贅型黄色腫が報告されています。
黄色腫の発生機序については未だ不明な点が多いですが、高脂血症, 糖尿病, 甲状腺機能低下症あるいはクッシング症候群などの脂質代謝異常の関与が示唆されています。細胞診では泡沫状あるいは類上皮細胞様のマクロファージが主体で観察され、時折、好酸性基質が細胞質内に見られます。
組織検査では粘膜下組織に細胞診で認められた細胞が多数集簇します。免疫染色でマクロファージ系のマーカーに陽性を示しています。ヒトの舌の黄色腫では乳頭型, 平坦型及び疣贅型に分けられ、いずれのタイプにも粘膜上皮の過形成がみられ, 過形成部位に隣接し, 変性した粘膜上皮の膜脂質を貪食することで泡沫細胞が集簇すると考えられています。
所見(舌の黄色腫): 粘膜下組織において、小型円形核と広い多角形細胞質を有するマクロファージ様細胞がシート状に増殖している。これら細胞の細胞質は泡沫状ないし顆粒状である。免疫染色では抗Vimentin、Iba1、CD204、HLA-DR抗体に陽性を示している。
どうぶつPathoアート改めNS cap‘動物の臨床と病理と何かいいもの勉強会:Animal Clinical Pathological Something Nice: 臨床力×病理力×人間力=PCAPということで、院内の勉強会を始めました。世の中で活躍する様々な人たちの体験談を通じて、人間力を高めて、病気の動物の飼い主様の心を救いたいと思っています。
勉強会を通じて、私はいかに、スタッフの皆に支えられているか学ぶことが出来ました。頑張っていれば、皆が見てくれているのだというのは、一番の励みになります。当院では低侵襲の手術をするために、新たに半導体レーザーを導入しました。動物の痛みに優しい手術を行うように、精進したいと思います。
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