小島動物病院AWC院長の小嶋です。PCAPとはPathology Centered Animal Practiceの略語で、‘病理学を中心にした動物の診療’です。ここでは動物の病理学に関わることを記載しています。2021年のテーマは‘超三流になる’です。もう一度、足元を見つめて、身近な病気を再度確認すること、所見をしっかり取ることをして、病理と臨床の事やそれに近しいことをまとめています。プラスαでは病理と日々の生活を結び付けて、少しだけアートなことをしたいです。今月は血管肉腫とアジアスキンケア検定です。

犬の血管肉腫(腫瘍、臨床検査、病理の視点から)
概要: 血管肉腫は血管内皮細胞に由来する腫瘍ですので、理論上は全身のどこに出来てもいいわけですが、実際は右心房、脾臓、肝臓に発生するものでほとんどを占め、更にその中でも脾臓の発生割合は多いです。ゴールデンレトリバーやジャーマン・シェパードに多いとされ、日本ではゴールデンレトリバーに目立つと思います。進行のとても速い腫瘍です。いっぽうで、皮膚血管肉腫や第3眼瞼に発生した場合は、転移の可能性は低いです。個人的には皮膚の血管肉腫の診断基準は欧米と日本では少し見解の相違があるように感じ、欧米では積極的に悪性の診断をしているように思います。

腫瘍の発見は画像検査で見つけることが圧倒的に多いですが、血液検査を振り返ってみれば、貧血、血小板減少、赤血球の形態変化(断片化、有棘化)も常に注意深く観察が大事に思います。血管肉腫かなと怪しさを感じたら細胞診をしてみると比較的容易に診断可能であり、1ないし複数の明瞭な核小体と豊富なクロマチンを有する円形核を有する多肉な紡錘形~多角形細胞が採取され、細胞質内に微細空胞を入れる傾向があります。その際の臨床的注意点はしっかり凝固検査を済ませておいたほうが良さそうです。出血に対する安全性を担保するとともに、診断の一助となります。臨床診断で外科手術に進むわけですが、脾臓が大きければ、即、血管肉腫とはいかず、血腫の可能性なども事前によくお知らせするようにしています。ただし割合としては多いのは確かと思います。確定診断は病理組織検査で行います。脾臓の血管肉腫は摘出が比較的容易ですが、肝臓や心臓で発生した場合はかなりハードルが上がってしまいます。進行が速いことからなかなか抗がん剤治療までスムーズには進みませんが、ドキソルビシンを基本としたプロトコールが使用されていますが、心毒性のある薬ですので、心臓に発生あるいは転移しているような場合は更に慎重となります。ただし抗がん剤治療をした場合で、生存期間が明らかに延長している報告がありますので、早期発見が大事と思います。以上は主に犬の特に脾臓の血管肉腫を対象としたお話しでしたが、猫でも発生は稀にあるようです。当院ではハムスターを代表選手とするエキゾチックアニマルの血管肉腫を散発的に経験しております。

所見(犬の脾臓の血管肉腫)
脾臓において境界不明瞭な充実性腫瘍が形成されている。腫瘍においては大小不同な類円形核と好酸性細胞質を有する血管内皮細胞由来紡錘形~多角形細胞が無数の不整な血管腔を形成している。腫瘍細胞は多数の核分裂像と強い異型性を有する。非腫瘍領域では多数の血栓や髄外造血が認められる。

どうぶつPathoアート改めNS cap‘動物の臨床と病理と何かいいもの勉強会:Animal Clinical Pathological Something Nice: 今月のNS capですが、当院のグルーマーの長谷川舞さんがアジアスキンケア検定を取得されました。ますますの成長が楽しみです。最近、知人にスティーブン・R・コヴィーさんの名著:7つの習慣を推薦してもらい、大喜びで読んでいますが、第6の習慣を参考に、皮膚科認定医とのシナジーを創り出していきたいです。

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