小島動物病院AWCエキゾチックアニマル診療科の小嶋恭子です。
日々の診療の中で皆様にお伝えしたいことを発信していきたいと思います。
鳥の体の特徴的な構造のひとつに「嗉嚢(そのう)」があります。
前回は「そのうについて」、「そのうの異常を疑う症状」、「そのう検査」についてお伝えしました。今回は実際、そのうで見られる主な病気についてです。
トリコモナス症
原因は口腔、食道、そのう、上部小腸に寄生する「トリコモナス」という寄生虫です。口腔内の違和感からしきりに口を開けて舌を動かす、嘴をこすりつける、吐出、食欲不振などの症状が見られます。そのう液または口の拭い液を顕微鏡で観察し、トリコモナスを検出することで診断します。治療は抗原虫薬の内服です。
カンジダ症
カンジダは常在菌ですが、免疫力の低下などで増殖すると病原性を示します。嘔吐・吐出、食欲不振などの症状が見られます。そのう液検査や糞便検査で多量に観察され、かつ症状が見られる場合は、抗真菌薬により治療します。
そのう停滞(うっ滞)
そのう内に食事や飲水が異常に長時間たまってしまう状態をいいます。原因は、全身状態の低下や環境変化などで、そのうの蠕動(ぜんどう;食べ物を押し進めようとする消化管の運動)が機能的に低下した場合と、そのう内容物が異物などで物理的に流れなくなる場合があります。拡張したそのう内に食物や水がたまるため、そのうが垂れ下がって胸が膨らんだように見えます。食欲がなくなり吐出や嘔吐が見られることもあります。症状がある場合は原因を究明し改善します。たまった内容物によって菌が繁殖するため、抗生剤や抗真菌剤も必要です。
そのう内異物
日常的に布やひもなどをかじり、ほぐれた繊維が少しずつそのう内で固まってフェルト状の塊を形成します。異物が大きくなると、そのうが膨らみ慢性的な吐き気を伴いますが、症状が見られるまでは気づかないこともあります。診察ではそのうを触診し、そのうの中で移動が確認できれば異物と診断できます。首にできるできものやそのう内の腫瘍と鑑別するために、レントゲン検査や消化管造影検査を必要に応じて行います。大きさや素材によっては吐き出してくれるケースもありますが、基本的に治療はそのう切開術による異物の摘出です。誤食を予防するために放鳥中は目を離さないようにしましょう。
そのう内異物:皮膚から透けて見える
摘出したそのう内異物:繊維の塊
消化管造影検査:そのう内に異物が確認できる
そのう腫瘍
発生は少ないとされていますが、そのう内に腫瘍が発生することがあります。腫瘍の大きさや発生部位により症状の出方は異なりますが、主に吐き気や慢性嘔吐が見られます。異物との違いはそのうの中で移動しないことです。摘出が可能であれば外科手術を行います。
そのう腫瘍
診断は「扁平上皮癌」でした
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