PCAPについて

PCAPとは


Pathology centered animal practice

PCAPは、Pathology Centered Animal Practiceを略した当院の造語です。単純に訳すと‘病理学を中心にした動物の診療’です。
病理学とは ‘病:やまいの理:ことわり’ を明らかにする学問です。何の病気なのか、その病気になるとどうなるか、なぜその病気になったのかを診断することです。「正しい診断」なくして「正しい治療」あるいは、「妥当な治療」は成り立ちません。長い間、ヤマイのコトワリを明らかにする病理学は診療・治療方針を決定づける病気の確定診断を行うにも関わらず、直接、飼い主さまに病状を説明したり、方針を決定したりすることがありませんでした。
当院院長は学生時代よりヤマイのコトワリを明らかにする、病理学の世界に魅了されてきました。一方、臨床を同時並行で学ぶ先に、薬による内科治療やメスによる外科治療に先んじて、いかに飼い主さまとのコミュニケーションが獣医療において、圧倒的な重要性を持っているかということに気が付きます。ご家族さまに病状を理解していただくためには憶測、あいまいな情報、あるいはたとえ最先端であっても3次元に留まるような、検査結果のみに振り回された病気の理解では足りず、時間軸とヤマイのコトワリを土台とした思考、病気の理解が重要です。

私たちは動物がもし Animal Wellness の枠を超えて病気になった場合には、病理検査をはじめ、さまざまな検査や手技を用いてヤマイのコトワリを明らかにしようと努めます。それを土台に、ご家族さまとのコミュニケーションの中で信頼を築き、各ご家庭の幸せを共に模索していきます。
幸いにも当院には経験豊富で飼い主さまに寄り添うことを善と志す動物看護師達の歴史がございます。医療の根幹を成すヤマイのコトワリを理解することを中心とし、そのために周辺環境と情報を整える。そして暖かいコミュニケーションでそれらをつなぎ、思考し、纏め上げる。それが私たちのPCAPです。

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病理診断とは

病理診断の3本柱、(1)細胞診断 (2)組織診断 (3)解剖診断について

細胞診断

尿・血液・鼻水などの液状物や‘できもの’から細胞を採取し、顕微鏡を使って診断に重要な手がかりになる細胞(例えば癌細胞)を探し出します。診断上の重要性はもちろん簡便性、迅速性、安全性から将来どの動物病院でも必須検査にすべき技術であると考えています。

犬の肛門周囲腺腫の細胞診像犬の肛門周囲腺腫の細胞診像

組織診断

細胞診断を経て病気がどのようなものであるかを確実にするために、体の一部や腫瘍から組織を採取し診断するものです。すなわちどのような質あるいは程度の病変か、さらにその予後はどうなのか(例えば腫瘍なのか否か、良性なのか悪性なのかなど)を含め診断いたします。

犬の良性乳腺腫瘍の組織像犬の良性乳腺腫瘍の組織像

病理解剖

残念ながらお亡くなりになった動物たちに対してご家族の皆さまとご相談の上、解剖が行われることがあります。解剖の目的としては生前の診断確認、病気の進行具合、治療が適切であったか、そして死因はなんであったかを明らかにします。まさに最終診断であります。

獣医師のご紹介

小島動物病院アニマルウェルネスセンター院長小嶋大亮

小島動物病院アニマルウェルネスセンター
院長/博士(獣医学)
小嶋 大亮Daisuke KOJIMA

獣医師、博士(獣医学)、日本獣医病理学専門医(Diplomate JCVP)、JAHA認定総合臨床医、日本獣医皮膚科学会認定医
北里大学獣医病理学研究室卒業(学部、博士課程)および米国ルイジアナ州立大学Pathobiological Sciences留学(博士研究員)。

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病理医のいる動物病院

診療の質の向上には病理診断の意義は極めて大きいです。なぜなら病理診断は確定診断を行う科であり、正しい診断なくして適切な治療は不可能だからです。一方で病理医は一般社会で広く認識されている医師ではなく、獣医療では病理医のいる病院は大学病院などごく限られた施設のみになります。
その背景から当院では、病理診断を元に獣医師内で通称 ‘山猫の会’ なる検討会を通じ、スタッフ全員が正しく病気を理解すること、ご家族の皆さまに診断医が直接説明することを大事にしています。
本診断科は当院を選んでいただいたご家族の皆さまから信頼を得られるように努力を重ね、最終診断を担うものとしての責任と自覚を持って日々の業務にあたっております。

(動物)医療関係者、研究職の皆さまへ

動物医療のみならず人医療に携わる皆さまや研究職の皆さまにも、動物の病理医が臨床を行うことへのご理解をいただいている現状に心より感謝申し上げます。

臨床、病理そして経営の3足のわらじは、いつも私に自問を投げかけます。

  • 1. 動物病院に病理医がいるメリットはなんだろうか?
  • 2. 病理医が臨床を行うことにメリットがあるのだろうか?
  • 3. 孤独と思考を好む病理医に膨大な心とコミュニケーションを要する院長職を全うできるのか?

これらのことは、どの教科書にも答えがあるわけではありません。
いずれも高い壁の連続で、まさに七転八倒の苦しみです。今も葛藤は根深くありますが、多くの人に支えられ、育ててもらった病理をどうしてもやめたくなかった。自身の宿命ともいえる先代からの仕事を超え、自らの生きる価値を示したかった。信頼してくれる飼い主さまと生活と未来を抱えるスタッフへ自らの使命を果たしたかった。欲張りで、どれをとっても中途半端とお考えの方も多いと思いますが、自分の道を究めるしかありません。毎日、出来ることを一生懸命やっています。どうぞご理解とご指導をいただければと思います。

私なりにではございますが、3方をPut togetherする中でそれなりによいこともございます。
まず病名に関しては、診断名だけでなく所見を読むことが圧倒的に重要であると思います。ある癌の診断はつくでしょう。しかし癌の周辺環境はどうなっているのか、炎症や変性の具合はどうなっているのか、臨床医が抱える術前検査の小さな違和感のある所見と合致するのか、その点が明らかになることは治療の吟味に重要であり、結果的にご家族が求める多様なご要望に比較的容易に出来ることと、出来ないことを分けることが可能となります。
次に、臨床の素晴らしいところの一つに4次元、すなわち時間軸で診ることがあると思います。動物の診療では担当獣医師が立派であれば、基本的に産まれたころから亡くなるまで経過を追えます。最高に客観的なことがアートである病理検査ですが、やはり経過を知るということは何よりも自身の不勉強を教えてくれます。また、ご家族の皆さまとのコミュニケーションの向上は、不確実を確実に変える機会を授けてくれます。

長い時間と心を灯して培った信頼と、それに続く最後の病理検索の機会を得ることがどれほどに臨床医としても成長をもたらすかを、おごりかもしれませんが経験しているような気がします。病理診断という圧倒的な事実を基盤にすることは、治療や方針に迷いがなくなります。自信を持って方針を決め、未来を予測し、しっかりと最善あるいは次善の手を打つことは、スタッフやご家族の皆さまからの協力を得ることが容易であり、順調な運営に貢献することが分かってきました。もう少し学んできたこともございますが、まだ道は始まったばかりですので、引き続きご容赦とご理解をいただければと思います。多くの方にご指導をいただいた病理の基本を必ず守り、臨床を併せ、時に基本を離れ検証し、社会に資する時は時々基本を破ってみて、PCAP道を究めることに集中したいと思います。