小島動物病院AWC獣医師の小嶋恭子です。PCAPとはPathology Centered Animal Practiceの略語で、‘病理学を中心にした動物の診療’です。ここでは動物の病理学に関わることを記載しています。
いつもは院長からの発信ですが、今回は腫瘍科を担当させていただいている私から、7月6日に東京で開催された「日本獣医がん学会」での発表についてご紹介させていただきます。
どんな学会?
「日本獣医がん学会」とは‘動物のがん診療・研究を推進、人材を育成し、動物と飼い主さまに貢献できる様々な活動を行う’団体です。
年に2回学会が開催され、動物のがんについて専門的に学ぶ人たち(診療に当たる獣医師だけではなく、病理医、研究者、学生、医師など)が全国から集まり一緒に勉強します。
私はこの学会が定めた獣医腫瘍科認定医Ⅱ種を取得しています。
なぜ学会発表するのか?
腫瘍とは、「本来自己の体内に存在する細胞が、自律的に無目的にかつ過剰に増殖する状態」と定義されます。難しい表現ですが、自分の体の一部が急に‘敵’になるわけです。しかも、時も場所も選ばず突然やってきます。なので、この病気と闘うためには、敵の特徴をよく知ることが重要です。どんな顔(細胞)で、どんな動きや性格で(どう拡がって)、どの程度体に悪さをするのか(命に関わるのか)。自分の一部なので、隠れるのが上手で発見しづらいです。自分の一部なので、闘うときに病気じゃない自分まで傷ついてしまうことがあります。そして、この病気についてもまだまだ分かっていないことがたくさんあります。
ですから、病気の理解を深めるために、専門に学ぶ者が集まり情報を共有し、意見を出し合い、より良い診療を目指しています。私も今回は、大変まれな病気だと病理で確定診断された、犬の腎臓のがんについて発表してきました。世界中の研究や論文を調べても、まれといわれている病気ですが、会場には同じ病気の犬を診療した経験のある先生がいらして、貴重なご意見をいただいたり、違う視点からのご指摘をいただいたり、大変勉強になりました。
このように発信することで、残念ながら救うことのできなかった命も、同じように苦しんでいる次の命に橋渡しをすることができます。そして、私は獣医師として、ひとつひとつこういった勉強を重ね、動物と飼い主さまに貢献できるように日々努力を続けたいと思います。