小島動物病院AWC院長の小嶋です。PCAPとはPathology Centered Animal Practiceの略語で、‘病理学を中心にした動物の診療’です。ここでは動物の病理学に関わることを記載しています。
嘔吐・下痢などの症状を引き起こす原因は様々です。
消化器の病気になった場合の代表的な症状は嘔吐や下痢だと思います。
私自身の話になりますが、風邪がお腹にきた場合は手洗い・うがいなどの基本的な予防意識の不十分さを後悔します。二日酔いで気持ち悪い時は、前日の夜の自制心のなさを後悔します。
色々後悔することも多いと思いつつ、繰り返してしまうのも、消化器の病気の辛いところであると思います。動物達もお盆やお正月などの行事で人間のものを食べたり、雷や花火などの音にビックリしてお腹を壊すことがあります。このようなエピソードはどこのご家庭にもありますし、微笑ましいトラブルのレベルかと思います。
今回はそれらより重篤な嘔吐や下痢に代表されるいくつかの消化器の病気の原因をご紹介したいと思います。
予防できる病気はキチンと予防しましょう。
消化器の病気には感染症に由来する病気もたくさんあります。混合ワクチンやフィラリアのお薬などには消化器に異常を起こす感染症の予防が盛りだくさんです。
例えば寄生虫ですと、回虫、鉤虫、鞭虫、条虫です。ウイルスですとジステンパー、コロナ、パルボが含まれます。今回は消化器の病気ですので割愛しますが、最近話題のノミやマダニの予防や猫の白血病予防も同時にできます。
これらの病気はいずれも古典的なもので、発症してしまうと治せない病気も含まれます。確実な予防をおすすめします。
【 回虫卵、回虫の内視鏡、組織の写真 】
【 猫の汎白血球減少症の腸の組織 】
アクシデント的な病気には注意したい。
いくら予防をしても防げない病気もあります。そう言ってしまうと身も蓋もないのですが、比較的、ご家族の皆さまがご自身を責めてしまうケースをご紹介します。私達が経験する中では異物の問題やそれにより腸閉塞を起こしてしまうことがあります。異物の問題などはご家族さまの目撃情報がとても頼りになります。気を付けていたのに~!!と後悔される気持ちもよく分かりますが、緊急事態につながるアクシデントです。
ついつい双方に慌ててしまいますが、どのような治療を行うのか、特に具体的には、内視鏡だけで済むのか、あるいはお腹を開けなくてはいけないのかなど、冷静にご相談しなくてはいけないと思います。夏はお祭りなどイベントが多いのでよくよく気を付けていただければと思います。
【 異物の内視鏡 】
【 腸重積の組織 】
病理診断が必須の炎症性疾患や腫瘍性疾患に対応しています。
当院で診療を行っている消化器の病気で最も特徴的なものは病理診断が必要となる胃腸の病気です。
病理診断、すなわち確定診断が必要になる胃腸の病気としては、継続治療が必要となる慢性の胃腸炎、特に炎症性腸疾患の病理診断による確定とそれに基づく原因究明と治療方針を含む生活アドバイスがあります。また腫瘍、すなわちガンの診断にも病理診断が必須になりますので、その確定診断を行い、その他の情報である病気のステージや遺伝情報、ご家族さまのお考えを踏まえ、その後の治療方針を決定しています。
いずれも動物はもちろんですが、ご家族さまにとっても負担のある病気です。だからこそ、しっかりした確定診断に基づいて、後悔のない治療や対応をさせていただくことを大事にしています。
【 炎症性腸疾患の内視鏡所見と病理組織像 】
【 消化管間質腫瘍(GIST)の免疫染色像 】