小島動物病院AWCエキゾチックアニマル診療科の小嶋恭子です。
本格的な夏に向かっていくこの時期、梅雨のジメジメも加わり、エアコンを使用する機会も増えてきたことと思います。
最近の診察室での飼い主様との話題は、専ら温度管理のこと。特に鳥さんのご家族はエアコンを使用することに対する不安が大きいようです。
そこで今回は、気になる「鳥さんと温度の話」をしたいと思います。
鳥にとって快適な環境とは?
①野生下での暮らしをイメージする
いま一緒に暮らしている鳥の本来の生息地域の温度や湿度、気候を知っていますか?
飼育に適した温度は、鳥の種類によって異なります。例えば、オーストラリアの乾燥地帯原産のセキセイインコやキンカチョウは乾燥した環境を好みますが、熱帯雨林出身のオウム類はある程度湿度のある方が過ごしやすいでしょう。
概して、私たちと生活を共にしているコンパニオンバードたちは、暖かい地域の出身が多いので、人間が快適と感じる温度より少し高めで暖かいと感じるくらいの方が過ごしやすいようです。
ですので、飼育に適した温度は概ね17℃から30℃の範囲となります。
しかし、最も気を付けたいのは、温度よりも温度変化だと私は考えています。日中留守にしている間は高温の部屋で、帰宅後冷房を付けて一気に低温、となると体が参ってしまいます。1日の温度差はできれば3℃以下、大きくても10℃以下に抑えたいものです。
ケージには温度計を設置し、数字で実際の温度を確認しましょう。
②鳥のしぐさをよく観察する
暑いと感じているのか、寒いかと感じているのか、鳥のしぐさがヒントになることもあります。
暑がっている、あるいは湿度に苦しんでいる時:
脇をあげ、翼を体から浮かせ気味にして、体の熱がこもらないようにしています。
また、くちばしを半開きにして、喘ぐような荒い呼吸をしている時は高温多湿で呼吸が荒くなっている状態です。
寒さを感じている時:
羽を全体的に膨らませ、羽と羽の間に暖かい空気をため込もうとします。
ただし、具合の悪い時も羽を膨らませてじっとしていることがあるので、このような場合は28~30℃を目安に保温します。
冷房の効いた室内で飼育する場合は、夏でもビニールシートやペットヒーターによる防寒対策が欠かせません。
おまけ
どうして鳥がそんなしぐさや行動をするのかは、鳥の体のつくりを知っていると理解しやすいです。鳥は飛ぶために進化する過程で様々な体の構造や機能を手に入れました。
「羽毛」もその一つ。羽毛は飛行のために欠かせないものですが、実は本質的な役割は断熱です。重なりあった羽毛が空気の層を作り出し、熱の移動を抑えています。代謝率の高い鳥の体温は40~45℃もあるので、断熱効果のある羽毛がないと外気との温度差によって簡単に熱が奪われてしまいます。寒いときに羽を膨らませるのは、自分なりに体温を保とうと頑張っている、ということになりますね。
また、鳥は体の中に「気嚢」と呼ばれる空気の袋をいくつか持っています。気嚢は、呼吸を助けるのはもちろんのこと、体内の熱処理の機能もあります。体内にこもってしまった熱を呼吸で体の外に排出しているので、暑いときは呼吸が荒くなるのです。
この気嚢の役割は効率的な保温にも役立ちます。暖かい空気を吸い込めば気嚢が温まり、気嚢に包まれている内臓が温められます。つまり、鳥の体を温めるには、鳥がいる部屋の空気を温めなければ意味がないということです。
大切な家族の故郷に思いをはせ、進化の歴史に考えを巡らせ、楽しくHappyな鳥さんとの夏を過ごしてくださいね♪