小島動物病院AWC院長の小嶋です。PCAPとはPathology Centered Animal Practiceの略語で、‘病理学を中心にした動物の診療’です。ここでは動物の臨床と病理学に関わることを記載しています。今回は猫の皮膚に見られる肥満細胞について記載しようと思います。

  (トルイジンブルー染色で異染性を示す肥満細胞)

 

痒いと赤いについて

猫ちゃんの皮膚の診察をさせていただくときに、飼い主さんから、多く寄せられる主訴は痒いと赤いです。皆さん、とてもかわいそうで見ていられないとおっしゃられます。その中で肥満細胞という細胞が関与していることが多くありますので、ご紹介させていただきます。

肥満細胞は 細胞質内にヒスタミンなどの化学物質をいれており、それが放出されると炎症が発生し、痒みが出て、搔き壊してしまうと赤くなってきます。猫の頭頚部の皮膚にはもともと多く存在しますが、その数が多くなれば、それだけ痒みが増してきます。

 

肥満細胞が関与する病気とその治療

代表的な病気としてはアレルギーが代表的だと思います。アレルギーにはノミや食餌に関係しているものがあります。アレルギーが特定できる場合には除去・避けることが大事です。アレルギー以外でも、感染症や免疫異常でも、それなりに増加することもあり、原因疾患の治療に加えて肥満細胞を制御する治療が有効なこともあります。

 

スフィンクスやデボンレックスという品種では皮膚肥満細胞症という皮膚疾患が存在しますがこれらはあまり一般的な病気ではないと思います。

 

肥満細胞が最も増える病気は肥満細胞腫という皮膚腫瘍があります。これは腫瘍:分かりやすい言葉ですと皮膚がんに該当するので、手術の適応になります。猫の皮膚の肥満細胞腫は多発したり、再発することも多いですが、治療できるがんです。

(肥満細胞腫のHE染色像)