小島動物病院AWC院長の小嶋です。PCAPとはPathology Centered Animal Practiceの略語で、‘病理学を中心にした動物の診療’です。ここでは動物の病理学に関わることを記載しています。2021年のテーマは‘超三流になる’です。もう一度、足元を見つめて、身近な病気を再度確認すること、所見をしっかり取ることをして、病理と臨床の事やそれに近しいことをまとめています。プラスαでは病理と日々の生活を結び付けて、少しだけアートなことをしたいです。

無菌性化膿性肉芽腫性脂肪織炎(皮膚、免疫、栄養・生活、病理の視点から)
概要:この病気は単一の疾患ではなく、非感染性で化膿性肉芽腫性脂肪織炎が生じる総称です。教科書を見て見てもバラバラに書いてあるので、よく整理させていないように思います。代表的な病気としてはダックスフントやプードルの体幹部にできる本態性/特発性無菌性結節性脂肪織炎で顔面、四肢、体幹などに丘疹~結節状病変として認められ、進行するとともに有痛性になり、潰瘍や瘻管が発生します。その他の臨床症状としては発熱、嗜眠、食欲減退が生じます。

 

その他には無菌性化膿性肉芽腫症候群というものがあり、実際は完全に感染症の可能性は排除しきれておらず、Leishmaniaが関与しているようです。付属器周囲にソーセージ様あるいは結節パターンとして見られるのが特徴的です。その他、3週齢~4か月未満の子犬で発生するものは若年性肉芽腫性皮膚炎とされます。類似するような疾患群ですが、臨床的に鑑別のポイントがあったり、病理的にポイントがあったりして見分けていく疾患と思います。その他には免疫介在性、栄養性、膵臓病に由来する無菌性化膿性肉芽腫性脂肪織炎があり、これらも臨床と病理所見がセットで初めて診断が成立していく病気になります。

組織学的にリンパ球、多核巨細胞、類上皮細胞などからなり、壊死や好中球浸潤が強く出れば、化膿性炎症の像が出ます。無菌性ということなので、感染性病原体を検出する培養検査や特殊染色でも全て陰性を示します。治療はステロイドの治療に良く反応しますし、 シクロスポリンなどの免疫抑制剤も使えます。

所見(犬の無菌性化膿性肉芽腫性脂肪織炎/原因は免疫かな)
皮下脂肪織において境界明瞭な炎症性病変が複数形成されている。炎症巣は中心に大小の抗MHC-2抗体陽性の類上皮細胞を配し、その周囲に好中球、抗CD3・CD20抗体陽性リンパ球および形質細胞が多数浸潤している。同様の炎症巣は周囲の脂肪組織にも形成されており、いずれにおいてもグラム染色、グロコット染色、Fite法およびPAS反応で陰性であった。

どうぶつPathoアート: 今回のPathoアートはネタ切れを起こしたため、うちの息子がはまっているレゴニンジャゴーと私が大好きな坂村真民さんの言葉にします。ピノコVSサイバー・ドラゴン:キルベルスです。今月はゴールデンウィークもあったし、獣医病理診断研究会でも発表させてもらうので、これで良しにしたいと思います。最近は波に恵まれることが多く、若干寝不足の日々です。新潟はこれから波のない時期に入るので、もう少し、勉強の時間を取りたいと思います。

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