小島動物病院AWC院長の小嶋です。PCAPとはPathology Centered Animal Practiceの略語で、‘病理学を中心にした動物の診療’です。ここでは動物の病理学に関わることを記載しています。2021年のテーマは‘超三流になる’です。もう一度、足元を見つめて、身近な病気を再度確認すること、所見をしっかり取ることをして、病理と臨床の事やそれに近しいことをまとめています。プラスαでは病理と日々の生活を結び付けて、少しだけアートなことをしたいです。今月は犬の褐色細胞腫とNScap:致知です。

褐色細胞腫(腫瘍、臨床検査、病理の視点から)
概要: 褐色細胞腫は副腎髄質のクロム親和性組織から生ずるクロム親和性細胞腫で、発生は稀な腫瘍です。臨床症状は犬ではカテコールアミンを産生・放出するため2次的な高血圧症を発症しますが、他の特徴的な症状は出現しないため、腫瘍の腹腔内占有や他臓器への転移によるものでようやく発現し、生前診断の困難な腫瘍です。よって剖検時に偶発的な所見 として得られることが多く、生前診断の所見が少ないです。その中でも腹部超音波検査は有用であり、50%から83%の検出率です。

人では血中および尿中カテコールアミン濃度と尿中カテコールアミン代謝物濃度の測定が行われており、ノルエピネフリンとエピネフリンの両方を分泌することが知られていますが、犬および猫では褐色細胞腫の発症時に人と同様に分泌するか否かが証明されていませんので診断的価値は議論の余地があるがあるとされていますが、私の少ない経験ではしっかり上昇しているように思います。超音波ガイド下で細胞診を行うことで理論上、診断が可能ですが、高血圧・頻脈・不整脈が発生することがあり、注意が必要であると思いますので、副腎腫瘍であることと、副腎皮質腫瘍やその他の孤在性腫瘍を否定することが大事かなと思っています。

手術は大変難しいですが、摘出できれば予後がいいとされています。

所見(犬の副腎褐色細胞腫): 薄い結合組織に区画されながら腫瘍細胞がシート状に充実性に増殖している。増殖細胞は核小体明瞭な円形核を有する類円形~多角形細胞であり、細胞質は好酸性で、微細顆粒状である。細胞異型は明らかで、有糸分裂像も散見される。

結合組織による区画はマッソントリクローム染色により明らかである。稀に腫瘍の血管内浸潤も認められる。免疫組織科学的染色において腫瘍細胞は抗クロモグラニンA及びS-100抗体に陽性で抗MelanA抗体に陰性を示している。

 

どうぶつPathoアート改めNS cap‘動物の臨床と病理と何かいいもの勉強会:Animal Clinical Pathological Something Nice:どうぶつPathoアートは私の息切れにより、NS capへ移行いたしました。やっぱり美術系アートの能力は皆無のような感じです。当院では、動物を医療的に救うだけでなく、飼い主様や地域社会の発展や幸せを大事に考えており、Bond based management(絆に基づいた運営)という理念を持っています。そのためには人間力が大事ということで、致知を使ってみんなで勉強をすることにしました。もうすぐ40歳になり両足をおじさんの領域に入れていくので、不惑の勉強をしようと思います。

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