小島動物病院AWCエキゾチックアニマル診療科の小嶋恭子です。
日々の診療の中で皆様にお伝えしたいことを発信していきたいと思います。
当院にハムスターさんが来院される理由の第1位は、脱毛、ふけ、赤み、できもの(腫瘤)といった「皮膚の異常」です。基本的な病気の考え方は他の動物と同じですが、ハムスターの体の特徴を知らないと、正常と病変を間違えやすいので注意が必要です。
ハムスターの体の特徴
臭腺(皮脂腺)
ゴールデンハムスターでは両側腰背部(脇腹腺)に黒い斑状に、ドワーフハムスターでは腹部正中にあります。
頬袋
ハムスターは左右に1対の頬袋を持っています。実は肩甲骨のあたりまで伸びるので、たくさん中身が入っていると大きく膨らみます。
陰嚢
性成熟した雄のハムスターの陰嚢は体に比して大きく、引きずるように歩きます。
これらの臭腺、頬袋、陰嚢の正常な構造は、腫瘤と勘違いされることがあります。
症状と診断
脱毛がある
まずは被毛に異常がないか、寄生虫が関与していないか顕微鏡で毛の観察を行います。
一部が脱毛している
出血があれば外傷を疑います。しこりがあれば細胞診を行います。
全身に広範囲に脱毛している
かゆみを伴わず左右対称に脱毛している場合は、生殖器疾患、副腎疾患や甲状腺疾患などの内分泌疾患を疑います。確定診断は難しいですが、お腹の中に異常が見られないか腹部超音波検査を行います。
かゆみを伴う
炎症が関与しています。炎症の原因は環境(床材に対するアレルギー反応など)、細菌や真菌、寄生虫、腫瘍など多岐にわたります。テープ検査で皮膚表面の炎症や感染の評価を、必要に応じて細胞診、細菌や真菌の培養検査を行います。
「かゆみのない広範囲の脱毛」
「一部の脱毛」
「皮膚に赤みがある」
「傷を伴う脱毛」
表面に見えるのは皮膚の異常ですが、特に感染症(細菌、真菌、寄生虫)の場合、免疫力の低下や二次的な感染のことが多いので、他の病気の存在や強いストレスがないか注意深く診断します。
治療
飼育環境の見直し
床材によるアレルギー性の反応が疑われる場合は、床材の変更を試みます。ケージに入れている小屋やおもちゃにケガの原因と思われるものがあれば取り除きます。
内服
外用剤は適切な量を使用することが難しいうえ、薬の付着自体を気にすることが多いため処方することはまれです。したがって内服が中心になります。検査結果をもとに、必要に応じて抗生剤、抗炎症剤などを液体で飲ませやすく工夫して処方します。
爪切り
かゆみが強く掻き壊してしまう場合は爪切りを行います。
腫瘤
治療は基本的に外科的な摘出です。全身麻酔は高齢になるほどリスクが上がります。また、腫瘤が大きくなるほど必要な手術時間も長くなり体への負担も大きくなります。様子を見ないで早めに手術を検討します。
体の異常で一番気づきやすいのが皮膚の異常です。それは最初のSOSかもしれません。いつもと違うに気づいたら早めに診察を受けましょう。
次回は実際に良く遭遇するハムスターの皮膚の病気についてお伝えします。
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