小島動物病院AWC院長の小嶋です。PCAPとはPathology Centered Animal Practiceの略語で、‘病理学を中心にした動物の診療’です。ここでは動物の病理学に関わることを記載しています。
今回は動物の内分泌あるいは代謝性疾患について記載したいと思います。
内分泌・代謝性疾患は気付きにくいので、日頃の健康診断がお勧めです。
内分泌や代謝性疾患の症状は様々で、徐々に進行することが多くなかなか気付きにくいものが多いです。症状もなんとなく元気がない、あるいは逆に元気がありすぎる、食べているのに痩せていくあるいはどんどん太っていくなど、本当にもともとそうなのかはっきりしないことも多いです。症状も皮膚病、神経病、心臓病あるいは胃腸や排泄への影響と多彩です。その動物のことを良く分かっていないと、当てずっぽうや思い付きでやたらと検査項目を増やしてしまうことがあるため、何よりも飼い主様と普段から些細な変化についても情報交換をすることやスクリーニング検査となる血液検査を健康診断に組み込んで利用して頂くようにしています。以下に代表的な病気を少しご紹介します。
代表的な病気の種類
甲状腺の病気
甲状腺ホルモンは体の様々な代謝を活発にするのに活躍するホルモンです。
犬ではこのホルモンが欠乏する甲状腺機能低下症がよく知られ、その症状には肥満、倦怠感、運動不耐性(運動を嫌がる)、左右対称性の脱毛、皮膚の色素沈着、高コレステロール血症、貧血など多彩です。
いっぽう、猫では犬とは反対に甲状腺機能亢進症が有名で、高齢の猫で甲状腺に良性の腺腫が形成され過剰な甲状腺ホルモンが分泌されることにより、食べているのにどんどん痩せてしまう、大きい声で鳴いたり、うろうろ動き回る、性格がきつくなるなど、飼い主様にとって困った症状が多いです。
進行すると心臓病、腎臓病、肝臓病、高血圧症など様々な疾患が併発してしまい、治療にも難渋することがあります。
いずれも診断は甲状腺ホルモン検査をスクリーニング的に検査して、その後の追加検査を検討します。比較的内科的に管理することも出来る病気で終生に渡って健康が維持できることもあります。
副腎の病気
副腎皮質機能亢進症はクッシング症候群とも呼ばれる、副腎皮質ホルモンの過剰が原因で起こる内分泌疾患です。
脳に原因がある下垂体性クッシングと副腎腫瘍のパターンがあり、糖尿病になっていることもあります。
症状は多飲、多尿、多食、太鼓腹、皮膚病、免疫力の低下による感染症や高血圧症も関係する脳梗塞など様々です。
副腎の機能を計る血液検査や画像検査で診断します。
治療法は、原因にもよりますが内服薬や腫瘍を手術する方法が行われます。
いっぽうで亢進症の反対である副腎皮質機能亢進症はアジソン病とも呼ばれ、副腎皮質が壊れてホルモン(グルココルチコイドとミネラルコルチコイド)の分泌が不足してしまい、元気がなくなったり、神経病の症状が現れます。神経病が強く出てくると治療も難渋することがありますので、早めの対応が必要です。
糖尿病
ホルモンの病気の代表選手とも言える糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンの欠乏やインスリンに対する感受性の低下が原因で、血糖値が上昇し、尿に糖が出てきます。診断は高血糖と尿糖を証明することで確定しますが、もっと深くにある本当の原因は膵炎であったり、脳や副腎の病気であったり、時に癌があったりすることもありますので単純な糖尿病なのか、他の原因が潜んでいないのか注意深く診察しています。糖尿病の治療イメージはインスリンと思いますが、原因によって治療法も全く異なります。
黄色脂肪症、黄色腫
黄色脂肪症(汎脂肪織炎)とは猫に発生する病気で、お腹の中の脂肪が過剰に酸化して黄褐色のセロイドという物質が沈着してしまい、自分の体が異物だと認識してしまい、炎症が生じてしまいます。不飽和脂肪酸の過剰摂取、すなわち魚、赤味魚の長期投与が原因ですので、適切な食餌管理はとても大事です。同じような病気の名前で黄色腫という病気がありますが、犬で見られ、コレステロールを主成分とする脂質を貪食したマクロファージの集簇を指し、正確な発症メカニズムはよく分かっていませんが、これも高脂血症, 糖尿病, 甲状腺機能低下症あるいはクッシング症候群などの脂質代謝異常が存在するとされており、日頃の生活習慣が大事です。人と同じで健康な食や運動はとても大事ですね。
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