小島動物病院AWC院長の小嶋です。PCAPとはPathology Centered Animal Practiceの略語で、‘病理学を中心にした動物の診療’です。ここでは動物の病理学に関わることを記載しています。2021年のテーマは‘PCAP2.0’です。
若干世間には遅れをとっておりますが、最近、‘鬼滅の刃’を大人買いしてしまいました。
噂通り、面白くて一気に読んでしまいました。鬼狩りも大変だけど、鬼の気持ちや背景にも共感することが多くて、とても切ない気持ちになりました。みんな、来世では幸せになってほしいなと思います。今月は、覚えたてほやほやの呼吸の型を使って病理診断にまつわる診療のプロセスをご紹介したいと思います。
病理診断にまつわるプロセスを知ろう!!
当院で病理診断を最も多い機会は腫瘍、皮膚病、内視鏡検査によるものだと思います。そのパターンで腫瘍:癌の診断パターンが最も分かりやすいので、ご紹介します。
基本的には癌の診療は以下の型に沿って進行していきます。
壱ノ型:見つける(自分or健診)
まず問題となる異常、例えばできものがあるというのを飼い主様が認識され、‘これはなんぞや’ということで疑問を持たれる段階です。皆さま、インターネットでお調べになられますが、よく分からない、あるいは病理診断が必要ということまで理解して頂いています。
弐ノ型:分かる(細胞診)
確定診断まではいかないこともありますが、ひとまず、どのような病気であるか目星がつきますので、悪性度を加味して、どのようなスピード感で、手術に進むかなどの、次のステップへ議論を行います。柱合会議ですね。
参ノ型:確かめる(検査)
手術をすると決めたはいいが、果たして安全に行えるのかなどのリスク評価を検査で明らかにしていきます。検査項目は血液検査、レントゲン検査、超音波検査、尿検査などが含まれます。人間ドックみたいな感じです。
肆ノ型:取る(手術)
手術を行います。術前検査をしていますので、どのようなリスクがあるかはある程度、検討済みで進みます。極力、痛みのケアをするために低侵襲手術を実施しています。治療に携わるメンバーは全集中で、時折、透き通る世界が見えたりします。
伍ノ型:元気にする(術後ケア)
手術が無事に終わっても、動物が元気になってもらえなければ意味がありません。しっかり手術や麻酔で疲れた体をケアし、退院に向けて、霹靂一閃・猪突猛進で進んでいきます。
陸ノ型:決める(病理診断+コンサルティング)
病理組織診断による確定診断と予後及び治療方針の決定です。良性であったり、全て取り切れていれば、治療は終了となりますが、悪性のものですと定期検査や追加治療などの必要があり、飼い主様のお考えを踏まえて今後の進むべき道をご相談します。
何の剣士になろうかな?
病理医を剣士に例えると何の呼吸かと考えました。私的には日の呼吸だと思います。最も基本となる型だと思います。でも人によっては臨床が日の呼吸だから、月の呼吸だと思うかもしれません。少なくともその二つのうちのどちらかでしょう。そう考えるといろんな診療分野がありますが、それらは派生の呼吸ということになります。漫画を見ていると序列をつけるのは無意味なように、みんないいキャラクターですよね。獣医師は皆、いろんな呼吸の使い手です。今後も全集中で、型を深める努力をしていきたいです。今更ですが鬼滅の刃おすすめいたします!!