小島動物病院AWC院長の小嶋です。PCAPとはPathology Centered Animal Practiceの略語で、‘病理学を中心にした動物の診療’です。ここでは動物の病理学に関わることを記載しています。本日のテーマは当院で行われている腫瘍、がんの診療のことについてご紹介したいと思っています。
当院の腫瘍科には診断と治療の認定を受けた専門家がおります
過去のPCAPブログにも幾度となくご紹介させて頂きましたが、がんの診断には細胞を観察する病理診断が必要です。診断がつけばそれに沿った治療を行う必要があります。獣医師あるいは動物看護師になるための教育課程、日々の診療経験、そして自己研鑽のための卒後教育の中でがんの診断と治療を学ぶあるいは行う機会は誰にでも開かれております。いっぽう、現在では専門分野の細分化が少しずつ進み、より深い知識や経験を数年かけて備え、その能力検定を行い、基準をクリアした者を認定するシステムが出来ております。当院では診断として日本獣医病理学専門家協会の認定を受けた病理医(リンクhttps://jsvp.jp/)と日本獣医がん学会に認定を受けた腫瘍科認定医(リンクhttp://www.jvcs.jp/)が在籍し、もしも癌が疑われるようなことがあっても安心して受診できる動物のがんの診療体制を取っております。
がんは体のどこにでもできますし、犬や猫だけではなくてエキゾチックアニマルにもあります
たまに‘動物にも癌があるのですか’と驚かれることがあります。米国の研究では犬猫の死因のトップに癌があげられており、犬の場合は約2頭に1頭が、猫の場合でも約3頭に1頭が、癌で死亡すると報告されています。また癌の定義の一つに‘生体自身に由来する細胞の異常増殖’というものがあります。すなわち自分の体の細胞がどんどん増えてしまうということなので、どこの臓器にも発生します。更に生き物は細胞から出来ていますので、犬猫に限らず、エキゾチックアニマルにも癌は発生します!
目で見て分かるような皮膚癌ですとご家族にも気づきやすいものになりますが、病院に来る動物達は人間の言葉が話せないので、最近元気がない、あるいはあんまり食べないなどの他の病気でも起こりうる症状があった場合には、実は体の中に癌があったなんてこともあります。上述しましたように、もしも重大な癌が発生した場合には、認定を受けた専門家によるサポートが重要になりますが、病気は重大になる前に手を打つほうがよいので、一見して平時の時から対応するために当院ではエキゾチックアニマル診療科による一般診療をすること、年2回の検診制度を設け、常日頃から診させて頂いている動物達の状況をよく把握するようにしています。
病気になること
今回は癌のお話を書かせて頂きました。皆さんは病気になったことがありますか?誰でも大なり小なりの病気にはなったことがあると思います。私は病気になると苦しいのはもちろんだと思いますが、なんでなんだろうとか、孤独を感じたりして、体だけでなく心が辛くなることがあります。癌を患った動物を抱えていらっしゃるご家族の皆様も同じようにどうしてとか、何かできることはないかと、時には自分のせいではないかと思われていることがあり、心を痛めてらっしゃることがあると思います。その思いをしっかり感じ、一緒に悩んだりすることは時に高難度の検査や治療をすることよりも難しいことがあります。少しでもお役に立ちたいとは思うのですが、時間も心も足りないことがあります。当院の医療面に関して癌診療が優れていることを書いたつもりですが、実はとても大事な点として看護師さんの丁寧な食餌管理やグルーマーさん達の清潔さを保つ努力、カウンセラーや受付スタッフのご家族の皆様への寄り添う姿勢が大変な癌治療を行っている動物とそのご家族の信頼の懸け橋になっていると思います。診療の舵取りを担うのは獣医師ですが、当院ではこのような細かい対応を大事にした癌診療を今後も大事にしたいと思います。