小島動物病院AWC院長の小嶋です。PCAPとはPathology Centered Animal Practiceの略語で、‘病理学を中心にした動物の診療’です。ここでは動物の病理学に関わることを記載しています。2021年のテーマは‘PCAP2.0’です。

細胞診について(一般編)
飼い主様がまず気になっていることは‘これは何の病気であるのか’ということです。皮膚のできものを見られた時に、皮膚がんかしら?と思うわけですが、‘何病ですよ’と教えてくれるのが細胞診です。病名が分かれば、飼い主様とどのような治療をしていこうかと相談することが出来ますので、すごく大事な検査です。通常は検査会社に送って診断してもらいますが、当院では自分達ですぐに診断できます。

もちろん皮膚がんに限らず、細胞であれば何でも見ますので、尿・血液・鼻水、便などの液状物でもOKです。簡便性、迅速性、安全性に大変優れた検査法です。

細胞診を高める(SDGs編)
当院では皮膚科の診療も多いですが、皆さまよく、‘この子は膿皮症なの。’とおっしゃられます。膿皮症の場合、細胞診では細菌感染を証明してくれます。治療では抗生剤を使いたくなるのですが、乱発してしまうと、抗生剤が効かない薬剤耐性菌問題が起こってしまいます。

その場合、私たち動物医療だけではなく、人の医療にも迷惑をかけてしまいます。完璧にやっていくといろいろ不具合も発生しますが、何も取り組まないと社会に迷惑をかけてしまうので、グラム染色を使いながら、有効的な抗生剤の使い方を考えたり、グルーマーさんが適切なシャンプー療法を実施しています。

ワンワールド・ワンヘルスですね。

細胞診を高める(プレゼン編)
飼い主様に十分に病気を理解してもらって、納得して治療を進めていけることが重要であると思っています。どれだけご理解いただけるかは、よく聞いて、よく話して、何度も繰り返すことが大事だと思います。でももっとスムーズに出来るともっといいなといつも思っております。昔見たCMで夫婦は同じものを食べているから似てくるというのがあった気がしますが、同じものを見ると、認識の距離がグッと近くなると思っていますので、当院ではインタラクティブボードを活用し、飼い主様のお考え+臨床検査+病理診断を一画面でお示しして、共通の理解にいち早く到達したいと取り組んでいます。

私は字がすごく汚いのでボードがご認識してしまうことも多々あります。その点、看護師さん達は、いつも私が問題を起こすのをフォローしてくれます。ありがとうございます。

細胞診を高める(技術編)
当院ではもっと細胞診の精度を高めたいといつも思っています。それは病気の名前を決めるという作業を通じて、飼い主様と病院スタッフが皆で同じ方向を向けるからです。その中で特にハードルが高いのが脳脊髄液や関節液などのナイーブな液体、胸腹水などの死に直結する病態、なんだか治らない膀胱炎の精査などがあげられます。当院をサポートしてくれる心友の協力で大学などの高度医療機関で採用されているサイトスピンを導入し、日々、診断精度の向上に努めています。

やっぱり持つべきものは友達ですね。